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私たちの視点 : 2010年8月アーカイブ

開発援助と民間投資 (第一事業部長 芹沢利文)

 アイ・シー・ネットでは、ベテランも若手も関係なく、「開発とは何か」、「国際協力はどうあるべきか」という議論が日常的に行われており、この自由闊達な社風こそが、この会社の長所の一つだと思います。

 
今回は、「開発援助と民間投資」をテーマに、一人のコンサルタントとして問題を提起します。このテーマへの異論反論を寄せてもらえば、当社の雰囲気を自ら肌で感じていただけるでしょう。
 
当社では、ナイジェリア政府に対して、地場産業振興に必要な政府のキャパビル支援を行っています。将来、ナイジェリアに投資したい、という環境を作ることに貢献しようと取り組んでいます。
 
途上国が途上国たるゆえんの一つには、民間投資の環境が十分に整っていないことがあげられます。もしも100万円の投資ができるなら、今仕事をしているナイジェリアよりも、急速な発展を遂げているインドに投資するでしょう。ナイジェリアの投資環境はかなり劣悪なため、高リスクでほとんど資金の回収の見込みがないようにみえます。こうした国の民間投資環境をどのように整備していくのか、途方に暮れてしまいそうです。しかし、民間からの投資が期待できないような国でこそ、ODAの役割が重要になってくると思います。
 
1990年代の終わりごろ、アメリカの経済学者と世銀のエコノミストの間で関係者には有名な論争があり、当時のタイのめざましい経済発展にODAがどれほど貢献したかというテーマでした。その経済学者は、統計的に証明することができないので、ODAはタイの経済発展にほとんど貢献できなかったと主張しました。一方、世銀のエコノミストは、どうにか統計的に有意なレベルにあるとの主張でした。
 
この論争では、タイのように比較的経済基盤の安定した国の経済発展は、国内と海外の民間からの直接投資に支えられ、ODAの影響はほとんど誤差の範囲だった、ということを明らかにしたと思います。沸騰するほどの多大な投資は、確かに民間からのものだったでしょう。一方、順風満帆に見えた東南アジア各国が97年のバブル経済の崩壊に直面したとき、その非常時に対応したのは、ODAを含む国際社会からの支援だったことも紛れもない事実です。
 
一般的には途上国の経済発展では民間の直接投資が牽引力となるのだから、ODAの役割としては、途上国政府が行う民間投資環境の整備を支援することがより重要です。先に述べたアメリカの経済学者が主張するように、ODAが途上国の経済発展に直接的に貢献する例はあまりないかもしれませんが、政府の能力開発、民間に対する公共サービスの充実、産業振興の施策、質の高い労働力の産出、社会・経済インフラの整備、行政の透明化と説明責任能力の向上によるビジネスコストの低減、競争的な市場のための基盤整備など、その国の発展を持続的で安定的にするため、ODAによる支援が期待される広い分野があります。
 
このように、投資環境が劣悪な国々、例えばアフリカ諸国では、ODAによる投資環境の整備による効果を期待することができます。その場限りのバブル経済を牽引するのではなく、いかに国の基礎体力強化に貢献し、底力をつけてもらうかが、ODAの一番重要な役割です。近視眼的な視野に縛られず、その国にとって本当に必要な支援が何かをいつも心にとめながら、今後も仕事をしていきたいと思います。
 
2010年8月15日
                                                    第一事業部長 芹沢利文
 
 

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